民法(所有権関係)と相続登記のルール改正迫る!

                     

今年の2月11日の新聞で報道されたとおり、民法の所有権(共有持分権)と相続登記のルール改正案が、政府の審議会で取りまとめられました。まもなく、改正案が国会で審議されて可決される見込みです。

この改正案は、所有者不明土地すなわち「不動産登記簿を見ても現在の所有者やその所在が分からない土地」の問題を解決することを主眼とするものです。このような土地を全国で集計したところ、すでに九州程度の面積があるとされています。また、当職の経験でも、土地を売却あるいはこれに借地権を設定しようとしたところ、相続人が多数で、かつ、行方不明者がいるためそれが困難となっているものが散見されます。さらに、今後も高齢化が進んで相続が多発し、これをきっかけにして所有者不明土地がますます増大するおそれがあります。

そこで、その対策のための改正案のポイントについて解説致します。

1)共有持分の一方的取得

まず、行方不明の共有者の持分を、他の共有者が適正な対価を供託して取得できることになりました。たとえば、AとBが土地を共有していたところ、Bが行方不明となった場合は、Aが適正な金額を供託して、Bの持分を一方的に取得できることになります。

ただし、Bが本当に行方不明か及び対価が適正かについて裁判所がチェックしますので、多少の手間がかかります。それでも、従来と違って行方不明者の持分を一方的に取得し、単独の所有物として処分や利用ができるので、共有持分権者の所在不明等の問題に対処できることとなりました。

2)相続持分の一方的取得

次に、この共有持分の取得の制度を、共同相続した土地にも適用できることとすれば、所有者不明土地問題の解決が大きく前進します。なぜなら、この問題の約7割が、相続を原因とするものだからです。

しかし、従来は、遺産分割において特別受益(生前贈与など)や寄与分の主張がされ得るため、各相続人の持分が法定相続分どおりとなるとは言えませんでした。そうすると、相続人の一部が行方不明になった場合に、その不明者の持分を一方的に取得しようとしても、その対価がいくらになるかを計算できません。

そこで、改正案は、相続から10年が経過した場合は、特別受益や寄与分の主張ができない(時効と同じ考え方)とし、これらが無いものとして法定相続分どおりで対価額を計算できることとしました。その結果、相続開始から10年経過後は、共同相続した土地についても、適正な対価を供託して行方不明者の持分を一方的に取得できることになりました。

3)相続登記の義務化

また、改正案では、相続発生から3年以内に相続登記すべきこととされ(義務化)、これを怠ると10万円以下の過料が課されることとなりました。登記簿を見ても相続人が分からないという状態そのものを防ぐための規定です。

ただし、義務化はともかく、過料の制裁は決して望ましいものではありません。そこで、弁護士会からも色々と意見を述べ、登記の負担を緩和する制度もあわせて導入されました。たとえば、新たに「相続人申告登記」という制度を設け、「相続人の一人である」旨を届出する(登録免許税はかかりません)ことで、この義務を果たしたことにするなどの制度が設けられました。

さらに、今後、相続登記全般について、相続開始から一定期間内は登録免許税を免除あるいは減額することも政府内で検討されています。これが実現すれば、早期に遺産分割して相続登記することが促されますので、相続土地の権利者が単独又は少人数となることが期待されます。

4)その他

他にも所有者不明の土地や十分な管理がされていない土地について、裁判所で選任された管理人が管理する制度ができました。また、一定程度の限界はありますが、土地を手放すための制度(相続土地国庫帰属制度)なども新設されます。

この改正案の今後の動向に、ご注意ください。

                 2021年2月

                       弁護士 児玉隆晴

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